北米金継ぎ通信 Vol.3


目次
Anime North イベント展示報告

Anime North イベント展示報告
7月15-17日の3日間、Anime North というイベントに出展して参りました。
(イベント内容は前回の記事を御覧下さい。)
初出展にも関わらず、運営側のご配慮で、通常の2倍のスペースを割り当てて下さいました。金継ぎへの期待の高さが伺えます。

今回展示したものは、色々な方に寄付して頂いた壊れた器を金継ぎしたもの、一度お客様にお返しした依頼品をお借りしたもの、生徒さんの作品、金継ぎの特徴や素材、道具など。
また、今までのお客様に依頼品のエピソードを送って頂き、写真と合わせてプロジェクターに投影しました。Beloved items(愛されている器たち)のナラティヴなアプローチを用いることで、金継ぎを知らない人にも最短で実感を持って貰える事を狙いました。

さて、開場してみるとひっきりなしに来場者が訪れます。ランチの時間も取れないほどの忙しさでしたが、多くの人に金継ぎの話を伝えられるという高揚感で、お手伝い下さった方たちと一緒にひたすら話し続けました。

不特定多数の方に向けて金継ぎの情報を発信する機会がこれまでなかったので、話してゆく中でいい学びを得ました。
その中のひとつ、金継ぎの認知度についてご紹介致します。

まず、Kintsugiという言葉を認識している来場者は全体の1%以下でした。恐らく、全体で3人ほどだったかと思います。
展示品に共通して存在している金色の部分に気付いてくれたのは、15%ほど。彼らの多くは、私が様々な陶磁器に金色でペイントを施していると思って見ています。
そして、驚くことに、金色の部分にすら気付かず、ただの食器/骨董屋だと思っている人が75%ほど。
一度話しかけ、これらは一度破損した器たちだと説明して金色の箇所を見せた時の反応はまた変わってきます。
Kintsugiという言葉は知らないけれど何となくその概念は知っているいう人が40%ほど。いまいちピンと来ておらず、そういう技術もあるのだなという反応の人が60%ほど。
つまり…Kintsugiという大看板を掲げて器を並べるだけでは、殆どの人に伝わらないという事でした。
「修復のアート」「一度破損したものだと信じられますか」などの言葉をアイキャッチにすると、かなり最初の説明が省けたように思います。
よく考えれば当たり前だったかもしれません。コロナ禍で少し世界的なな組織や企業で取り上げられたからと言って、言葉や概念はすぐ浸透するものではないのです。
今までは、金継ぎ空白地帯で何とか私を見つけ出してくれた人達とのやりとりが主だっため余り気にしていなかったのですが、完全な異文化で何かを広める時、既に自分の中で出来上がっている概念をこれ以上無いほど因数分解し、違う文化(知識、認識の仕方、理解の仕方、求められているもの)に従って組み立て直す事は大変重要だと実感しました

また、今回のイベントではワークショップも行いました。
金継ぎはお直しの手法であり、アートであり、日常で使用できる実用品であり、持ち主と金継ぎ師にとってもセラピーであり、様々な深い哲学を内包したものでもあります。西洋でこのように様々な要素が絡み合ったものは余り馴染みがないため、時間を取って多角的に説明してゆく必要があります。
そこで、綺麗な天然石への蒔絵体験で人を集め、その前にしっかり金継ぎ講義も行う事にしました。金継ぎにおいて、蒔絵は最後に継ぎ痕を金粉や銀粉で装飾してゆく過程になります。その技術を使って、天然石に思い思いの装飾をして貰うことにしました。

参加者さんの作品。漆で描いた上に真鍮粉を蒔いた直後のもの。ここから1日かけて硬化させ、余分な粉を洗い流して完成です。


実際手を動かして伝統技術の深淵に触れるというのは大変好評でした。定員の30名はすぐ埋まりましたが、当日どうしても参加したいという方が10名お見えになり、予備の素材を使って何とか行われました。最初は緊張されていた皆さんも、徐々に良い質問を沢山投げかけて下さったり、デザインを見せ合ったりして楽しんで下さいました。また、同じワークショップを他の機会にも開いて欲しいというご依頼を頂いたので、今後も蒔絵を通した金継ぎ普及活動を続けて行こうと考えています。

カナダで金継ぎと伝統工芸を広める活動を始めて2年半経ちました。
誰に頼まれた訳でもなく、何の後ろ盾がある訳でもなく、コロナで友達も出来ず、日本からもカナダからも支援金などなく、寒くて慣れない環境で身銭を切ってひとりで耐え忍んできた

2020年の春、夏、秋、冬、2021年の春、夏、秋、冬。

今回ひとつの小さなイベントに出展しただけのように思われるかもしれませんが、これらを思うと感無量です。

8月には、Japan Festivalでの展示もあります。今後、更に出展などで露出を増やして認知度を高め、企業とののコラボレーションなどに繋げて行ければと考えています。

確かに誰にも頼まれていませんが、伝統工芸を未来に繋げるためには誰かが行わなければならない事です。
銀座エヌを通して応援して下さっている皆様には感謝の念が絶えません。今後ともご厚誼ご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。

【ご支援のお願い】

私、Shuichiは、カナダを拠点として金継ぎと日本文化を広める活動を続けています。日本でもまだまだ金継ぎの認知度は低く、歴史や素材、工程などを伝える活動も行っております。付きましては、この場を借りてご賛同頂ける皆様よりご支援を頂ければと存じます。どうぞ宜しくお願い致します。

♥寄付して応援
 国内での啓蒙活動、国内における初の金継ぎ協会設立、全世界で金継ぎと日本の伝統工芸を広める資金とさせて頂きます。

 Paypal: officeshuichiro@gmail.com
 三菱東京UFJ銀行: 銀座通支店(024) 普通 0334238 コサカシュウイチロウ

♥紹介して応援
 メディアや講演会、イベントで金継ぎや日本文化の海外展開に関するお話をします。(オンライン可。)是非ご紹介下さい。

 Email: introjapanca@gmail.com

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<今回、【今月のお直し】はお休みします。>

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